LEVOLANT (January 2001)
story by: T.Yoshida
Photo by: S.Okumura

オン・ザ・レール!!
Lotus Elise tuned by MEISHOKU AUTOMOBILE

エリーゼのファンなドライビングを我がものとしている人でも、ほんのもう少しエンジン性能を 高め、サスを固めて、ワインディングでの走りをもっと楽しめるようにしたいと思っている人は 少なくないハズ。神戸の明植自動車がそんな要望に応え、こんなキットを作り出した。

 
エリーゼのトップエンドユーザーに エクシージのように硬派なモデルのドライビングはたしかに痛快だが、普通のエリーゼだって相当にファン・トゥ・ ドライブなクルマである。 通称「111」と呼ばる120psエンジンのノーマルモデルでもそうで、羽根のように軽い身のこなしとスポーツカー としては柔らかい乗り心地、それに超軽量ゆえに120psでも十分な動力性能など、その走りが数ある小型スポーツカーのなかでも群を抜いて愉しいものなのは間違いない。 しかしそれでも、ノーマル・エリーゼには少し物足りない部分がある。 そのひとつはエンジンのサウンドで1.8・DOHC16 バルブ4気筒のローバーKユニット自体が奏でるメカニカルノイズ や燃焼音は決して悪くはないが、いわゆるエクゾーストノート、つまり排気音となるとちと寂しい。 もうひとつは、スポーツカーとしてはかなりソフトなサスペンションだといえる。 私自身の個人的な好みをいえば、コーナリング中にスロットルオフやブレーキングによって容易に荷重変化を起こす ことが可能な標準のセッティングは嫌いではないし、スポーツカーらしからぬソフトな乗り心地も意外と好みだった りする。 60年代のオリジナル・エランの脚や乗り心地も、同様にソフトなものだったしね。 だがその反面、スポーツカーにはもっと硬めでシャキッとした乗り味を好むドライバーが多いのも、解る。 そこで、この2点に独自の回答を与えるべく、明植自動車がエリーゼ用チューニングパーツとして発売したのが、 エリーゼ・スポーツ・サスペンション・システムと、エリーゼ・スポーツ・エグゾースト・システムである。 前者は、ヨーロッパやアメリカのレース界では名高いブランドであるオランダのダンパー・スペシャリスト、 JRZサスペンション・エンジニアリングとの共同開発によるもので、減衰力を12段階に調整可能なダンパーと2種類の固さのスプリングからなり、価格は前後4輪セット29万円。 後者は、スペシャリストの製作になるステンレス製の排気系で、ノーマルとは異なる4-2-1型等長マニホールドと、 排気効率と音質にこだわり、小型化と軽量化も達成したサイレンサーからなる。 単体のプライスは前者が29万円、後者が26万円だが、両方をセットで購入するとちょうど50万円に収まる。 明植自動車には、左ハンドルをベースにして、これらのパーツを組み込んだデモカーがあるが、そのステアリングを 握って走り出すと、まずは豪快な排気音に痺れることになる。 謳い文句どおりアイドリング時のボリュームはさほど大きくないが、回転が常用域に入ってスロットルを深めに 踏み込むと、後方から"パフォーン"と表現できる、えもいわれぬ快音が轟き始める。 しかもそれは回転を上げるにつれて高まっていき、5500rpmに至ると脳天が痺れるようなサウンドを奏でて クライマックスに達する。 全開をくれたときの排気音のボリュームは、街中では気兼ねが必要なレベルにあるが、郊外のワインディングや サーキットでは、ドライバーに大きな悦びを与えてくれるはずだ。 しかもこのエグゾーストが凄いのは、音がよくなるだけでなく、パフォーマンスにも明らかにいい影響を与えている ことだ。 エンジンは低回転域でもトルクが痩せた印象がないばかりか、ノーマルより全般にトルキーに感じられ、 しかも高回転に至るとトルクカーブが明確な盛り上がりを見せる。 抜けのいいサウンドに強調されているのを差し引いても、このエリーゼは記憶にあるノーマルよりたしかに速い。

と同時に、スポーツ・サスペンションも明らかに効果的だった。 スプリングが強いために、乗り心地はたしかにノーマルより硬く、エリーゼ独特のソフトな感触は消え失せている。 しかしその反面、エリーゼの悪癖であるタイヤから伝わるハーシュネスが、見事に消えている。 おそらく初期応答のいいJRZダンパーが、それを吸収してしまうのだろう。結果として乗り心地は硬くなっているが、 快適さは損なわれていないといえる。 ではハンドリングはというと、これは明らかにノーマルより締っていて、姿勢変化もぐっと少ない。 それでいて、安定感と引き換えに身のこなしが鈍くなった印象はなく、依然としてアンダーの軽いオン・ザ・レール なコーナリングが味わえる。だだし、標準タイヤのピレリPゼロはJRZのサスペンションに負け気味だから、ヨコハマ A039にでも履き換えたほうが、この脚を生かせるはずだ。 いずれにせよ明植チューンのエリーゼは、速さとドライビングの愉しさの両面において、ノーマルを確実に上回って いるのはたしかだといえる。
 
GENROQ (May 2001)
story by: Y.Miyagawa
photo by: S.Koike

Meihsoku Automobile
ELISE 111 & 111S

エリーゼらしさに研きをかけるファインチューニングのお手本

 
神戸に本拠地を置くメイショク・オートモービルが仕立てたエリーゼはARCエリーゼとは好対照に、定番的手法で チューニングが施されている。 見た目にもごくごく普通のエリーゼに映るのだが、内外装ともにオールブラックの 111とJPSロータスの雰囲気を漂わせるブラック&ゴールドのカラーリングで品よくまとめられた111Sの2台を持ち 込んでくれた. 2台とも装着しているパーツは同一のもの。 同社オリジナルのステンレススポーツエキゾーストマニホールド& メインパイプ、ステンレススポーツサイレンサー、そしてJRZ製スポーツサスペンションシステムとなっている。 エキゾーストマニホールド〜サイレンサーは同社で綿密なデータ取りを進めて開発したもので、マニホールドは 等長し、排気効率の向上を図り、全域にわたるトルクアップを実現しているという。 オールステンレスとすることで重量はノーマルと比べて6kgほど軽量化されているそうだ。 まずは111に乗り込み、箱根のワインディングを攻め込んでみる。 111Sと比べてアンダーパワーであることを 嘆く111オーナーは多いが、個人的な意見を述べると111の線の細さというか、繊細さを感じさせるバランス感が、 昔のロータスにも通ずる良さのような気がするのだ。 そういった111のおいしいところをメイショク・オート モビルは巧く引き出している。 ワインディングでの常用回転域となる4000rpm〜6500rpmでは、スムーズに息つきすることなく、エンジンが 吹け上がり、思う存分、ワインディングを攻め込むことができた。 エンジンのパワー感やパンチ力は感じられない のだが、シャーシー性能が圧倒的に勝っているがゆえに、そのような印象を抱いてしまう、というよりは、あまりに ストレスなく、きれいにエンジンがまわってくれるので、逆にエンジンの存在に気を使うことなく、ドライビングに 集中できたというのが正しい表現だろうか。 111のような絶対的なパワーの少ないクルマの場合、このようなアップダウンの多いワインディングでは勾配に対してトルクが負けてしまい、エンジンが吹けあがる途中に頭打ちになってしまうことが往々にして起きるものだが、 メイショク・オートモビルの111にはそういった傾向はごく僅かしか見て取れなかった。 高音の効いた突き抜けるようなエキゾーストノートを響かせ、繊細なスピードコントロールで、コーナーを駆け 抜ける醍醐味を味わうには絶好の仕様とも言えるだろう。 JRZ製のサスペンションシステムはフロントスプリングが6kg/mmというエリーゼにしては硬めのレートを選択して いながら、思いのほか乗り心地は良く、ブレーキング時のフロントへの荷重のかかり方も良い感触が得られている。 安定指向が強く、サーキットというよりは、このようなワインディングにぴったりと合うセッティングではない だろうか。 これならば誰もがエリーゼのハイレベルなコーナリング・パフォーマンスを堪能できるだろう。 もう1台の111Sに乗って気づかされたのは、111とはまた違うエンジン特性の引き出し方だ。 5000rpmを超えたところで、一段トルクが太くなり、コーナ立ち上がりでの蹴り出しがより鋭くなっている。 エキゾーストノートも111に比べて、より太く、勇ましく、これはこれでまた魅力的だ。 繊細な111でコーナリングゲームを楽しむのか、鋭い立ち上がりでドライバーにも勇敢さを求めてくる111Sの蛮勇さ に惹かれるか。非常に贅沢な悩みでもある。
 
AUTOJUMBLE (June 2001)
イタリアの名門チューナーコンレロの味わいをロードユースに

明植自動車がリリースしたエリーゼ用のサスキットはいいよ、という話を某自動車メーカーのエンジニアから聞いた。 JRZといって、 あのコンレロの味わいを大切にしつつ、ロードユースで大切な乗り心地と操縦性に拘った"足"という説明を受けてよけい、そのJRZダンパーを付けたエリーゼに乗って見たくなった。

〓自信があるから性能曲線を出している〓
 
ここにはちょっと掲載出来ないが、明植自動車の植田さんから、資料にどうぞと渡されたJRZをPRする曲線をみて いて、こりゃ凄いぞ、と思った。1〜3cm/S でのダンパーの動きが、他のライバルたちと明らかに異なるのである。よく、微低速領域の減衰力がダンパーを評価する場合は重要といわれるが、このJRZはその領域での反応が凄い。 他のダンパーが動き出さない前に、もう減衰が立ち上がるのである。 スッとステアした瞬間に減衰が立ち上がるということは、エリーゼのようなライトウェイトスポーツには、 なににも増して重要なことで、それがヒラリ感につながるのだ。 ノーマルのエリーゼは、その辺にあまりコストをかけていないのは明らかで、「どうせ本当に走るのが好きな ユーザーは足を換えるはずだから、限られたお金を違うところに使おう」という姿勢がみてとれるのである。  事実、我が国でのエリーゼオーナーで走る快感に拘っているオーナーの多くが、足回りになんらかのモディファイを施している。 さて、JRZがどうだったかというと、性能曲線を証明するような印象を受けた。 試乗できたのはF:6.25kg / R:7.14kgのバネを入れた111Sで、ダンパーの減衰力設定はF:6ノッチ / R:8ノッチと いうものだったが、このバネとダンパーの設定は、これまで乗ったエリーゼの中で、一番"大人" のセットだった。 硬くなく柔らかくなくしなやか。2速がやっとといったワインディングでのフィーリングチェックだったから、 もっとGがグッとかかるようなコーナリングではどう変わるか分からないが、そのスピード域では良い足腰を 持っていると思えた。 とかくガツンとくるサスセットが多いなかで、JRZはギュッとくる足腰をもっていた。
 
ROSSO (July 2002)
story by: Akira.Suzuki
photo by: Toshikazu.Moriyama
本物はステージを選ばない。

JRZサス&伊藤レーシング・マフラー
明植自動車がプロデュースするモダン・ロータスのチューニングパーツ。
高次元な走りの領域へとアップグレードさせる、ドライバー趣向のアイテムを紹介する。

 
「撮影場所までエクシージでどうぞ」。明植自動車の植田氏に促されるまま、ロータス・エクシージのコクピットに身体を押し込む。 植田氏はもう1台の取材車・エリーゼに乗り込み、走り出した。その後を追うべく、イグニッションを捻る。ノーマルのそれとは明かに違う排気音とともに エンジンが目覚めた。そしてシフトを1速にエンゲージ。後に続く。 エクシージとエリーゼ、取材車2台にはオランダのJRZ社製サスペンションと、伊藤レーシング製マフラーが装着されている。どちらも明植自動車の オリジナルチューニングが施されている共同開発品で、今回のメインアイテムだ。2速。3速。4速・・・。思い切ってレブリミット近くまでアクセルを 踏み込む。するとアイドリングでは重低音だったエキゾーストノートが、レブカウンターの針と同調するように、一気に高鳴る。 変速時の息継ぎ感もなく、レーシングカーのようにどこまでもエンジンが回せるような感覚。レーシングマフラーを製作する、ファクトリーならではの サウンドチューニングだ。 エクシージの場合、大体5000rpmを境に低音から高音に切り替わる。その瞬間が病み付きになる。音量は(意図的に)全域で 高めの設定であったが、ローバー製の4気筒ユニットで、ここまでの音が出せるとは・・・・。 一方エリーゼは、エキゾーストマニホールドまで変更している こともあって、さらに緻密なサウンドが造られていた。低回転域から高回転域まで実にスムーズに吹け上がる。 トルク発生もフラットだ。 「エリーゼは登場時から、気になっていて発売されてからすぐに手に入れました。素晴らしいクルマだったのですが、サスとマフラーが不満で、チューニングして 改善したいと思ったんです。」  撮影場所に到着後、植田氏にチューニングパーツ開発の経緯を伺うと、こんな答えが返ってきた。 そこで、もともと欧州で クルマ関係の仕事(6年)をしていた経歴を持つ植田氏はそのネットワークを生かしてパーツ開発をスタートさせる。 自らの愛車、アルファロメオ75に装着し、 その性能を知り尽くしていたJRZ社製のサスペンションに白羽の矢を立てた。 「幸いにもJRZ社はイタリアのエリーゼワンメークレース(トロフェオ・カップ)に 参戦していたコンレロ・レーシングチームからの依頼でレース車両用ダンパーを供給していたんです。そのデータを元に、サーキットに加えてロードユースにまで 対応する減衰力調整ダンパーを一緒に開発しました」。 早速、ワインディングに場所を移して何度も走り込んでみる。ちなみにこの日のセッティングは以下のとおり。 減衰力(12段階式/1がもっとも柔らかい)は、エリーゼが公道仕様でフロント6、リア8。 エクシージはサーキット仕様でフロント7、リア9。 2モデルとも、ブリヂストンのSタイヤを履くため、通常のラジアルタイヤと較べて、コーナリングスピードが明かに高い。さらに速度を上げる。 複合コーナーが連続するコースにも関わらず、クルマの挙動は乱れない。 ロールもしないダイレクトなフィーリング。 ややオーバースピード気味に、ブレーキを 奥まで残しながらコーナーに進入してみたが、タイヤの接地感は失われることなく、しかもピストンの反応速度が速いのか、早めのアクセルオンに対してもトルク抜けが なく瞬時にトラクションが掛かる。公道レベルではまだまだキャパシティーに余裕があるようだ。 特にエクシージは植田氏によるTI用セッティングであったため、 サーキットに持ち込めば、さらに明確に、その真価を知ることができるだろう。 結論としては仮に2台とも所有できたら、サーキット用としてエクシージを、 ストリート用としてエリーゼを、使いわけたいところだ。
 
AUTO JUMBLE (June 2003)
story by: Shuntaro. Suzuki
photo by: Takayuki Aizawa
tester:Hisashi Wada
エリーゼの素性を強調したアシづくり

関西地区はセントラルサーキットでテストを決行。フェイズ1と2台のフェイズ2が持ち込まれ、
ドライブするのはWADA-Q選手。元F3000ドライバーの和田選手の評価はいかに?

 
まず一台目は、明植自動車が持ち込んだフェイズ1だ。Sタイヤが組み合わされているが、軽量化は行われておらず、基本的にはオリジナルの エグゾーストシステムとブレーキパッドが組み合わされただけのライトチューン仕様となっている。 これに組み合わされるのがJRZ製のサスペンションキット。イタリアで行われていたエリーゼ・ワンメイク・レース車両で、ダンパーを供給していたメーカーだ。 レース参戦によって得た豊富なデータを元に、ストリートでの乗り心地にも留意したセッティングが施されているのが特徴だ。ショックアブソーバーは40mm径ピストンと、 14mmのピストンロッドを採用した単筒式。12段階調整式とすることで、ノーマルのラジアルタイヤからSタイヤまで幅広く適応するという。 テスターの和田選手によると、「すごくバランスが良くて乗りやすいですね。ノーマルに比べて半分位のストローク量に感じますが、よく動くアシです。ブレ―キング ではしっかりと前に荷重が乗るし、ターンインが始まると今度はリアがロールオーバー気味になって振り出しますしね。ノーマルのエリーゼはピーキーなオーバーステア という感じでしたが、これはピーキーさは全くないです。ただし、リアはもう少し硬めた方がいいかもしれません。デフがないクルマの場合は、インリフトしてしまい、 空転してしまいますから、それでも、アンダーステアも少なくコントロール性も非常に高いので、誰が乗っても乗りやすいと感じるアシだと思いますよ」と語ってくれた。 乗り手とシチュエーションを選ばない完成度の高いアシ、と言えそうだ。
 
AUTO JUMBLE (June 2003)
story by: Shuntaro. Suzuki
photo by: Takayuki Aizawa
tester:Hisashi Wada
見事に消えたアンダー傾向

もう一台のフェイズ2は、明植自動車が持ち込んだノーマルラジアルタイヤ装着だ。
フェイズ2に合わせ若干のリセッティングが行われたJRZ製サスキットは、
ノーマルラジアルとも上々のマッチングを見せてくれた。

 
出来上がったばっかりのJRZ製フェイズ2用サスキットを装着したのが、このクルマ。「同じメーカーということもあるでしょうけれど、フェイズ1と非常に 良く似た印象です。バランスがいいですよ。街乗りに振っているから乗り心地もいいですね。でも、Sタイヤも充分履きこなせるだけのポテンシャルを持って いると思います。ですから、今回のようにノーマルタイヤとの組み合わせでは、もう少しフロントの減衰力を弱めた方がいいかもしれません。 ブレ―キング時に、初期の動きが硬めなので、フロントタイヤがロック気味になるんです。そこさえ気をつければ、フロントの回答性もいいし、リアの振り出しも 穏やかで扱いやすいです」という評価通り、ノーマルの軽快感はそのままにピーキーな動きを消し去ることに成功しているようであった。
 
ELISE & LOTUS TIPO(April 2004)
story by:Tatsuki Matsui
photp by:Masahide Kamio
tester:Hisashi Wada
ウェットでのコントロール性能も期待大

ステージを選ばないオールラウンダー

 
オランダに本拠を構えるJRZ社は、海外では有名なダンパーメーカー。その技術力にいち早く注目し、日本に導入したのが明植自動車だ。 JRZサスキットは、ストリートでの扱いやすさを考慮して、0.3secまでの初期ストロークの動きへのこだわりと、ガス圧を変えられるのがスペック上の 特長である 当日は減衰力フロント7番、リア9番、そしてガス圧は13.5barというTi英田での推奨値から走行スタート。走りはじめに感じたのは、とにかく 乗り心地が良いということ。初期ストロークの動きの良さがすぐに確認できた。前後の初期荷重に対してとてもナチュラルにストロークする感じで、 ストローク量が大きくなるほどにグッと減衰力が立ち上がるタイプ。ストローク幅を活かしてクルマをコントロールできる幅を広げている印象で、 決して腰砕けになるようなことはなく、とても扱いやすい。前後のロールスピードバランスが適正で、高速コーナーはお得意。 一方ヘアピンなどタイトコーナーへの進入では、減衰力の立ち上がりが速く、ブレーキング時にフロントがロックしやすかったため、もう少し奥で立ち上がる ようにフロントの減衰を1ノッチ落としてみた。かなりの変化が認められ、低速コーナーへのアプローチもスムーズに行えるようになった。セントラルでは、 現在のタイヤやブレーキにはちょうど良いマッチングじゃないかな。ストリートメインの味付けとはいえ、実際にはサーキット走行までしっかりカバーできる 懐の深いサスキットだ。
 
AUTO JUMBLE (August 2005)
story by: Hoshu.Hasegawa
photo by:Masayoshi Nakajima
ストリートからサーキットまでを本当にカバーするアシだった!

「ストリートとサーキットを両立させる足」を、うたい文句にしたダンパーは、
現在、数多くのメーカーからリリースされている。しかしながら、
それを両立させたダンパーはあったのか?答えはノーと言わざる得ない。
そんな日本人の無理難題をオランダのJRZ社が実現してくれた!
その実力は? 111Rを鈴鹿南コースでテスト。

 
以前からオランダJRZ製のダンパーに惚れ込み、エリーゼ用を開発してきたメイショク自動車だが、今回スタンダードエリーゼに引き続き、エクシージ&111R用のダブルアジャスタブル サスペンションシステムをリリースしてきた。 このダンパーの特徴はガス室がリザーバータンク内にあり本体と分離されている点だ。従来のシングルタイプではバンピーな路面で ゴツゴツ感を発生し、いわゆる「固い足」で操縦安定性が損なわれてしまうが、ガス室と本体を分離し、その間にブローオフバルブを設けることで、路面からの衝撃力がダンパーに 入力された時、ガスの反力が車体にほとんど伝達されずスムーズなダンピングとなる。またバンプ、リバンプを別々に調整できガス圧の変更により緻密なセッティングも可能なのだ。 試乗した111Rはサスペンションの変更以外は全てノーマルで、ホイール、タイヤも全て純正。また、植田社長のはからいにより、一般道、高速、ワインディング、鈴鹿サーキット南コースと。考えられるほぼ全てのステージのおよそ250kmを走破できた、クルマを借りる際に、植田社長から「今回のダンパーは、ストリートからサーキットまでカバーしています。乗り心地も大変良く、今までのダンパーとは別物ですよ」と言われたが、内心「今まで耳にタコができるくらいその手のことは聞いてきたけど、また同じじゃないの」と思いつつ、コクピットに滑り込んだ。しかし走りはじめた途端「おぉぉっ」とこの足の動きはなんだ!と思わずビックリしてしまった。このサスペンションにはバネレートF7.14kg、R8.04kgのスプリングが 入っているが、突き上げ感が全くなく、しなやかに路面をいなしていく。高速道路に入ってもその印象に変化はなく、それに加えて車体のフラット感がさらに増し、直進性および安定感 が抜群なのだ。試しに大きなRのコーナーに相当なスピードで進入しても、ノーマルエリーゼに見られるリアがスライドしそうな雰囲気は皆無。このリアのスタビリティーの高さは特筆物で、何ごともなかったごとくクリアできた。 これは鈴鹿に向う通い慣れた鈴鹿峠の下りセクションでも同様で、タイトコーナーをいつもの二倍以上速いペースでクリアしているのに、タイヤからのスキール音が出ない。ということはまだグリップの限界まで行っていないということなのか? その動きを細かに説明すると、入口でブレーキング、滑らかにフロントが 沈みはじめフロントに荷重が移動。ブレーキ踏力をリリースしながらエイペックスに向けステアリングを切り込んで行く。ここからリアタイヤのスライドがはじまるがリアタイヤは路面をつかんで離そうとはしない。その分トラクションを掛け弱アンダーを伴いながら立ち上がりでアクセルを踏み込んでいける、といった感じだ。 鈴鹿峠の路面には速度を抑制するために無数のイエローラインが道路を横切っており、ペイントに乗って絶えずピッチングを繰り返すのだが、そんな状況下でも身体に感じる突き上げは 無く、ピッチングもほぼなかったことは、このダンパーの持つ潜在能力の高さであろう。ここで感じたことは、少しスプリングが固いかな?ということくらい。 それほど印象はよかった。翌日の鈴鹿南コースでは、スタンダードエリーゼフェィズ2(JRZシングルアジャスタブルダンパー装着車)も合流し、シングル&ダブルの違いによる性能差の 比較をしてみることに。111Rは南コースの難所である3コーナーでも、ブレーキ踏力をコントロールしながらフロントに荷重を移した時、姿勢は極めて安定しており、2速にギアダウンした直後、通常ではフロント荷重が最大になってフロントが逃げアンダーになるか、リアが巻込みオーバーになるのだが、ほぼニュートラルステアでクリアすることができた。 かたやスタンダードエリーゼは、フロントに充分な荷重を乗せ切ることが出来ず進入時にアンダー傾向。ターンイン時では進入ででアンダーを消すため、速度をやや落としニュートラル ステアに持ち込みことができた。この間、クルマの姿勢は111Rに比べると不安定感があるものの、過去に乗ったエリーゼ達と比較すると断然フラットであった。 しかしその動きを裏付けるように、両ダンパーの最大の違いは縁石に乗った時の姿勢変化の違いだ。111Rはフロントタイヤが縁石に乗っていった際、タイヤが、ガツーンと縁石に弾かれ ることなくソフトに衝撃を吸収してくれる。それによりリアタイヤが路面から離れることなく姿勢はフラットのまま積極的に縁石を使っていける。 かたやスタンダードは、111Rと同じ状態を作り出してみるとフロントタイヤへ衝撃が加わった途端タイヤが弾かれてしまった。そうなると姿勢変化が起こりリアタイヤが浮きコーナーの 中で極めて不安定な状況になる。JRZ社ダンパーはオーナーがエリーゼ購入後、最初に洗礼を受ける部分を安定指向に振ることでミッドシップのネガな部分を消している。 しかし、このダンパーはさらに高い次元の走りに対応しているダンパーであり、ライバルに差を付けるための投資価値は充分あるであろう。私なら、エリーゼ購入後タイヤ、ホイールは ノーマルのままダンパーのみJRZ製ダブルアジャストを入れ、全てのステージに対応させていくのをオススメしたい。
 
AUTO JUMBLE (October 2006)
story by:Masamichi Okutsu
photo by:Ken Tsurumi
tester:Tetsuya Tanaka
オリジナルの魅力を引き上げるバランスの取れたチューニング
 
メイショクオートモービルのデモカーは、オリジナルの特性を大切にしつつ、ストリートからサーキットまでバランスよく楽しめる仕様。 足回り、排気系、ブレーキまわりにのみ手が入れられたファインチューニングというべき仕様だが、市販のパーツをただ装着しただけのものでは ない。いずれの装着パーツも、メーカーとの共同開発によって生み出されたオリジナル品とされているところにこだわりを感じさせる。 まず、足回り。オランダのJRZ社と共同開発されたダブルアジャスタブルサスペンション。ダンパー内部のガス圧を変更することで、 タイヤや走行ステージに合わせて減衰特性を幅広く調整することができる。サーキットはもちろん、街乗りに照準を合わせたセッテイングも可能だという。 足回りと同じくブレーキも、ディクセルと共同開発されたローター、パッドを装着している。 これらの組み合わせによって、街乗りを犠牲にすることなく、サーキットも楽しめるクルマへと仕上げられているのだ。
 
レーシングドライバー田中哲也の目
このクルマに関しては、ターンインでのフロントの入りが気持ちよかった。少しソフトでロールが大きめのサスペンションセッティングは、 コーナリングの進入において、少しオーバーステア気味にターンインを開始する。このときのステアリングワークやブレーキングは少しシビアな 部分があるが、それが思い通りに決まった時には爽快感を味わうことができた。しかし、個人的な好みを言えば、ロールを少なくして硬めのセットにして 走って、もう少し進入でのナーバスさを減らしてみたい気もする。それ以外の部分では、ブレーキのタッチやバランスなどは適度で、とても扱いやすく 安心感があった。
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